日本料理はなぜ世界でいちばんなのか 私が「吉兆」で学んだ板場道

作家名: 渡辺康博
出版社: あさ出版
1400ポイント
日本料理はなぜ世界でいちばんなのか 私が「吉兆」で学んだ板場道
関連タグ

あらすじ/作品情報

■誰が日本の料理をダメにしたのか私は長年、「板場(いたば)」として生きてきました。「板場」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどういうものか、ピンとこない方も多いかもしれません。世の中には二通りの“料理人”がいます。「板前」と「調理師」です。「板前」は、師匠について修業を積んだ人たち。一方の「調理師」は、調理師専門学校などを卒業した公的資格を持つ人たちです。そもそも料理人とは、自分が習得した技術と蓄えてきた経験、それを基に磨き上げた勘で素材のよさを引き出し、美味しいものを提供する職業です。その意味では板前も調理師も同じはずですが、現実にその道に邁進するのは板前で、料理の道を探求しようとする調理師は少ないように思えます。そして、板前の中に板場と呼ばれる人たちがいます。いま板前と板場は同じ意味で使われることが多いのですが、私は板前の中でも、より真剣に料理の道を究めようとする人間が板場だと考えています。日本料理は、板場の人たちが伝統と格式を受け継ぎ、よりよい味と文化を求めて精進してきた世界です。最近では冠婚葬祭の席でも洋風料理のコースが増えてきましたが、伝統的に日本では“大事な席”では日本料理が主役でした。日本料理の伝統と文化をより深く舌で味わい、肌で感じるために、定期的に全国各地を食べ歩きしています。どこに行っても、伝統の味を受け継いでいる店が激減しています。その理由は簡単です。現代は「食の多様化」の時代で、とくに都会では、リーズナブルな価格で何でも食べることができるからです。みんなが「安さ」を第一に考えるようになったため、本格的な日本料理店は閑古鳥(かんこどり)が鳴くようになりました。なぜ、食の世界がわびしくなってしまったのか。私は、他の業種が外食産業に参入してきた結果だと思っています。批判を恐れずにいえば、「手っ取り早く儲かりそうだ」と考えた異業種が参入して、日本の「食」の世界を破壊してしまったのです。私は「吉兆」という日本屈指の料亭で板場修業をし、いまは福岡で日本料理店の経営者をつとめ、高級路線の「海峯魯(かいほうろ)」と大衆路線の「海山邸(かいざんてい)」を展開しています。その経緯は後述しますが、日本料理を取り巻く現状を見るたびに、「なんとかして、この世界に活気を取り戻したい」と考えるようになりました。■著者 渡辺 康博

同じ作者の作品

ページTOPへ戻る